S.W.A.T.

S.W.A.T.は同名のテレビドラマ(邦題は特別狙撃隊S.W.A.T.)のリメイク作品。監督のクラーク・ジョンソンはアメリカの有名な刑事ドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」にメルドリック・ルイス刑事役で出演していた。

話の展開を大きく分けると前半のホンドー突入班の編成および訓練、後半の麻薬王の身柄を巡る戦いの二つになる。訓練の場面はかなり丁寧に描かれており、実物の飛行機を用いた突入訓練は本物のSWATの訓練とほぼ同じと言われている。一方で後半に関しては純然たるハリウッドのアクション映画であり、リアルさというのは殆ど無視され、映像の派手さや面白さが追求されている。最後に犯人のリーダーを追い詰めたストリートが、銃を捨てて格闘を挑むという格闘映画のような展開があるが、そのようなことは実際の職務執行ではありえない。

登場人物においては、ギャンブルのように好戦的で独断専行する人物は精神面や判断力といった点でSWAT隊員の適性が皆無であり、それどころか警官としての適性も大いに怪しいので、あのような者が実際に面接や心理テストに合格してSWATになれる可能性はかなり低い。フーラー警部はギャンブルを強く責めてクビにしようとしたが、後述するあらすじのようなことがあれば、不適切な発砲による刑事告発や懲戒免職も十分にありえる。あくまで物語の展開上彼のようなキャラクターが必要であった、ということである。またDVDに収録された監督のコメントによると映画製作当時、女性のSWAT隊員はいなかったよう。だが入隊資格には性別による制限がないので、サンチェスがSWATに入るという展開は全く問題がない。

ハリウッドのリメイク映画ではありがちなことだが、元になった作品に出てくる主要な登場人物の裏切りがこれにもある。それはミッション:インポッシブルのように「裏切りによって物語が始まり、途中で謎解きがされる」というようなものではなく、裏切りの少し前の場面でフリと思わせる台詞と態度はあるものの、端的に言って唐突に訪れる。前半からの脈絡ではなんら裏切りの必要性を感じさせるところがないので、なぜその者が警察に背かなければならなかったのか、動機という側面から話を追ってもさっぱり分からない。「その人物が裏切ることで、麻薬王の身柄を巡る争いがひどくなる」という、物語の展開上の必要性と考えられる。

このようなことから普通の人にとっては、結構な割合を占める訓練の場面はリアルであるが故に「つまらない、退屈」ということにもなりうる。一方でSWATのような作品を見たがる警察マニアにしてみれば、「後半の展開やギャンブルはありえない」ということもある。

警官の装備類などはかなり考証されており、実物にかなり近くなっている。パトロール警官の身分証明バッジがいかにも劇中小物で、実物とは異なるという指摘も一部警察マニアの間ではあったが、それはかなり詳しいマニアでないと分からないレベルのこと。基本的には「本物もあのような服装、装備をしている」と考えて差し支えはない。戦術においても鉄製の槌でドアを破って進入する、またトラックで建物の一部(実際はドアの前にある防犯用鉄格子など)を破壊して進入口を作るということも、現実に行われている方法。