
グラディエーター
コンピュータグラフィックスを多用した制作と、世界的な規模で行われた宣伝には、当時としては破格の1億4500万ドルが費やされ公開前から注目を浴びていたが、アメリカ国内だけで約1億8700万ドル、また全世界で4億5700万ドルの興行収入を記録した。さらにアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、MTVムービー・アワードなど、同年度の賞レースで圧倒的な強さを発揮した。しかし、一部の歴史学者からは、時代考証などの点で疑問を呈する者が少なくなかった。にも関わらず、主人公の英雄的行為や迫力に満ちた戦闘シーンが観衆から絶大な支持を受けた点、更に関連したスタッフ及びキャストに数多くの映画賞や賞賛を獲得した点が、『トロイ』、『アレキサンダー』、『キングダム・オブ・ヘブン』といった大規模な歴史映画の続発を齎した。
原案を書いたデイヴィッド・フランゾーニはスピルバーグの『アミスタッド』脚本が縁で本作の企画もスピルバーグ監督作品としてスタート、監督はリドリー・スコットに交替したが提供プロダクションはスピルバーグのドリームワークスSKGとスコットのスコット・フリーの共同となった。フランゾーニは本作の後『キング・アーサー』の脚本を手がけ、ヴィン・ディーゼルが監督・主演する"Hannibal the Conqueror"、韓国映画『JSA』のリメイク版への参加も伝えられている。
フランゾーニの原案を脚本化したのはジョン・ローガン。しかし、ラッセル・クロウが不満を公にしたため撮影開始前に降板(ローガンは解雇であると主張)。撮影開始時点で脚本は充分練られておらず、ローガンに替わって起用されたウィリアム・ニコルソンは復讐劇の要素を強化し、オリヴァー・リードの急死で頓挫した製作を救って本作成功の一端を担った。以上3名はアカデミー脚本賞にノミネートされた。
劇中でラッセル・クロウが強いオーストラリア訛りの英語を喋っている事に対し「ローマ時代にオーストラリア人がいたのか」と皮肉る発言について「古代ローマ帝国時代に英語など存在しない」と反論する声もあるが、この歴史学的な議論自体がフィクションとしての娯楽映画に適さないので、全く意味をなさない。