
座頭市
盲目というハンデキャップを背負った謎の侠客「市(いち)」の活躍を描いた時代劇である。本作は北野作品において初の時代劇であり、従来の作品よりも娯楽的要素が強いものとなった。
本作は勝新太郎の代表作として高名な人気時代劇『座頭市シリーズ』を題材にしたが、「盲目でありながら居合抜きの達人」という座頭を主役にしている設定以外、子母澤寛が執筆した原作や前述した本家の座頭市シリーズとは、まったく関連が無いオリジナル作品である。
観客動員数は国内200万人で、北野映画における最大のヒット作となった。これまでの北野映画は大衆性が薄く、海外での評価は高かったが日本では一部のファン以外には受けなかった。それに対し、本作は無敵の侍が活躍するという解りやすい内容である。北野自身、或る知人から初めて映画を絶賛されたと吐露した。その反面、日本を舞台にした時代物の映画であるにもかかわらず主人公の市は金髪と碧眼、ジーンズ姿であり、そのうえ劇中でタップダンスを披露する場面が公開前に大きく取り上げられたことで複雑な思いを抱いたものも多く、これに対する非難した者もいた。
なかでも多くの時代劇で活躍してきた松方弘樹と千葉真一は、両氏が出演した映画の舞台挨拶上で本作を「時代にこびた時代劇」と言い放ち、「妙な時代劇が定着してしまうのは恐ろしいことだ」と痛烈に批判、その様子がワイドショーなどのメディアやマスコミへ取り上げられた 。 その一方で、常識を破壊し大胆かつ斬新な発想で新たな座頭市のイメージを創造したという意見もあり、賛否が分かれるところである。 北野監督は「『キル・ビル(Vol.1)』も『ラストサムライ』も全くの偽物。本作こそ正真正銘の本物」と自負した。それでも「勝さんは超えられない」と謙遜していた[要出典]。 公開時のキャッチコピーは「最強。」。本作製作の動機としても、自らを料理人になぞらえ「あんた、うまいんだかまずいんだかわかんないようなもんばっかり作ってるけど、うまい親子丼とか作れんの?」と思っている人達に対する「じゃあ親子丼作ってやろうじゃないの」という思いがあったと語った。
劇中で農民が田畑を耕す音や大工が作業をする音などにリズムをつけて独創的な音楽を演出し、祭りのシーンでは大人数が下駄を履いて、一斉にタップダンスを披露するなどミュージカル的な効果を狙った。
なお、この映画はR-15(グロテスクな表現があるため)に指定されての劇場公開となったが、地上波での放映時は、放送コードに抵触した一部のシーンやセリフをカットされ、WOWOWでは本作に手を加えることなくそのままR-15指定として放送されている。 現状ではR-15指定にもかかわらず、15歳未満でもビデオおよびDVDをレンタル可能。