ゴッドファーザーPART III
『Part I』と『Part II』の圧倒的な成功を受けて、何度かその続編の製作の話が持ち上がったが、種々の都合で立ち消えとなっていた。しかし1990年になり、ついに『Part III』が製作されることとなる。当初はマイケル・コルレオーネとその相談役のトム・ヘイゲンの組織をめぐる確執を描く予定だったが、トム役のロバート・デュヴァルが出演料が折り合わず降板したため、脚本を大幅に書き直す事となった。
マフィアのボスとして絶大な権力を握ったマイケルの最晩年の物語である。本作品でのマイケルには『Part I』や『Part II』の時のような冷酷さや非情さが消え、物語は彼の懺悔と苦悩を中心に描かれている。また、1970年代後半から1980年代に明らかになったヴァチカンにおける金融スキャンダルと、それに関連して起きたと噂されている1978年のヨハネ・パウロ1世の「急死」や、1982年に発生し世界を揺るがす大スキャンダルとなったロベルト・カルヴィ暗殺事件といった実在の事件が作品に織り込まれている。
マフィアとイタリア政界、ヴァチカンの不明朗な関係と腐敗をあからさまに批判した内容が災いし、アカデミー賞には7部門でノミネートされながらも結局受賞には至らなかった。批評家たちからの評価も芳しくないまま、興行的にも前作に届かぬ結果となった。特にメアリー・コルレオーネ役のソフィア・コッポラ(監督であるフランシス・フォード・コッポラの娘)に対する批判は苛烈なもので、ソフィアは同年度のゴールデンラズベリー賞の最悪助演女優賞・最悪新人賞を受賞してしまう。他にも『Part I』と『Part II』で重要な役割を果たしたロバート・デュヴァルの不在や、その結果当時まだキャリアの浅かったアンディ・ガルシアを物語の中心に持ってこざるを得なかったことなど、映画のキャスティングに対する批判が多かった。
高い評価を受けた前二作と比べると、総じて評判の良くなかった『Part III』だが、オペラの名作『カヴァレリア・ルスティカーナ』と同時に進展してゆくラストシーンの出来が秀逸なため、佳作と評する声もある。例えば、著名な映画評論家であるロジャー・エバートは、本作品に星三つ半のスコアを与えた。これは過去にエバートが『Part II』に与えた星三つを上回る評価である。